
甲状腺疾患では睡眠障害が起こりやすいことは、臨床の現場でもよく知られています。特に橋本病(甲状腺機能低下症)やバセドウ病(甲状腺機能亢進症)では、ホルモンバランスの乱れによって寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めやすくなる人が多くみられます。
そのため、睡眠薬やサプリメントを利用しようと考える方も少なくありません。なかでも海外で広く使われているメラトニンサプリメントに興味を持つ方は多いのではないでしょうか。しかし、日本ではメラトニンはサプリメントではなく医薬品成分として扱われており、市販はされていません。また、医療機関においても、保険診療としてメラトニンが処方されることは原則ありません。このため、個人輸入で入手しようとする方もいますが、使用には注意が必要です。
なぜ日本ではメラトニンが販売されていないのか
日本の薬機法では、医薬品やサプリメントは品質・有効性・安全性の評価を受けなければ販売できません。メラトニンは日本では医薬品成分として位置づけられており、食品やサプリメントとしての承認を受けていないため、国内では一般に流通していません。
個人輸入品は可能ですが、利用する場合、
・成分量が正しいか
・不純物が混入していないか
・安全性が確保されているか
といった点が十分に確認されていない可能性があります。
自己免疫疾患の人は特に注意が必要
メラトニンは「睡眠ホルモン」として知られていますが、実際には免疫系の働きを調整する作用も持っています。
自己免疫疾患を持つ人では症状を悪化させる可能性があるとして、メラトニンが市販される海外では摂取を控えるよう強く勧告されています。
橋本病やバセドウ病はどちらも自己免疫疾患に分類されます。そのため、甲状腺疾患の方がメラトニンを安易に摂取することは推奨されません。
メラトニンの作用は''睡眠"だけではない
メラトニンは夜間に自然に分泌され、体内時計を調整しながら眠気を促します。しかし、その作用は睡眠だけにとどまりません。
体温・消化管の動き・血管の反応・免疫調節など、全身のリズムに関わる幅広い働きを持っています。
状況によっては炎症反応を促すこともあり、単純に「睡眠だけのホルモン」と捉えるのは危険です。
こういった役割を考慮すると、単に「眠れるようになるホルモン」というより、全身に幅広く作用する“多機能ホルモン” であることがわかります。だからこそ、自己判断での摂取はリスクが伴います。
甲状腺疾患の睡眠管理は“生活習慣”が基本
甲状腺疾患の治療で最も重要なのは甲状腺ホルモンのバランスを整えることです。これは医師の管理のもとに行われますが、睡眠や疲労感などの「体調そのもの」は、どうしても日々の自己管理に委ねられがちです。
睡眠の管理について、メラトニンに頼るより、まずは以下の生活習慣の見直しが重要です。
- 就寝・起床時間を一定にする
- 朝食をとり、朝にしっかり太陽光を浴びる(メラトニン分泌リズム改善)
- 寝る前のスマホ・PC時間を減らす
- 適度な運動で体内時計を整える
- カフェイン・アルコールの摂取を控える
- 夕食時間を早めにする
これらは甲状腺ホルモンの安定にもよい影響を与え、結果的に睡眠の質改善にもつながります。
まとめ
メラトニンは日本では医薬品成分として扱われており、市販や保険処方は行われていません。
個人輸入は可能であるものの、品質や安全性が保証されていない点には注意が必要です。さらに、メラトニンがサプリメントとして市販されている海外においても、自己免疫疾患では摂取を控えることが勧告されています。
橋本病やバセドウ病などの甲状腺疾患がある方では、メラトニンの安易な摂取は避け、まずは生活習慣の見直しを行うことが大切です。そのうえで睡眠の問題が改善しない場合には、自己判断せず、医師に相談しましょう。






