橋本病の食事療法の基本は栄養バランスとヨウ素(ヨード)の過剰や不足に注意することです。橋本病の治療中の方だけでなく、治療が不要な経過観察中の橋本病の方も食事療法が大切です。
食事量が増えれば太りやすくなるため、エネルギー(カロリー)の過剰摂取に注意が必要です。しかし、なかには摂取エネルギーが少なすぎることで基礎代謝が低下している方もいます。
多すぎず減らしずぎず、適切な範囲内で食事量を調整しましょう。また、カロリーだけを気にしていると、タンパク質やビタミン、ミネラル、食物繊維の不足が起こりやすくなります。 タンパク質の主菜や野菜をしっかりと食べましょう。菓子やジュースなどの栄養価の低い食品を控え、食事をしっかりと食べましょう。
ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料になる、大切な微量ミネラルです。そのために、不足しても過剰でも甲状腺に悪影響を与えてしまいます。ヨウ素を過剰摂取することで健康障害のリスクが高まるために、もともと全ての方に対して「耐用上限量」が定められています※。そのために、橋本病の方は、橋本病でない方よりも注意する必要があります。
ヨウ素は海藻(特に昆布)に多く含まれています。「日本人は海藻をよく食べるために、ヨウ素の過剰摂取には身体が慣れている」という情報も多く見られますが、最近では過剰摂取が大きな問題になることが分かってきています。
ヨウ素の過剰摂取は甲状腺機能を低下させたり、甲状腺の細胞を傷つけることがあるため、橋本病と診断されたらヨウ素の過不足に注意しましょう。
食品の中で昆布や昆布出汁はヨウ素含有量が飛び抜けて多いので、できるだけ避けてください。それ以外の海藻類は少量でしたら問題ありません。
なお、甲状腺の検査前等に「ヨウ素制限」が必要となる場合があります。その際は、病院の指示に従って、ヨウ素制限を行ってください。それ以外では、ヨウ素は過不足のないようにしましょう。
ヨウ素が豊富な海藻類はどのくらい食べて良いの?甲状腺にどのような影響があるの?そんな疑問が解決するこちらがおすすめです。
※参考文献
橋本病の方は筋力の低下が起こりやすいため、筋力を維持するために、食事中のタンパク質不足がないように注意しましょう。
橋本病によって食欲が低下することがありますが、このような際に、おにぎりだけ、麺類だけのような食事を続けていると、タンパク質不足が起こってしまいます。注意しましょう。
タンパク質のおかずを食べる際は、必ず野菜もたっぷり添えましょう。ビタミンや抗酸化物質、水溶性食物繊維を補うことができます。
橋本病の方はLDLコレステロール値が高い傾向にあります。甲状腺ホルモン薬チラージンSの服用でコレステロール値は改善されやすくなりますが、食生活においても、油脂の種類に注意しましょう。 治療が不要な橋本病の方は、食事療法が何よりも大切になります。
オメガ3が多く含まれる青魚、亜麻仁オイル、エゴマ油と、オレイン酸が豊富なエクストラバージンオリーブオイルがおすすめです。よい油でも、とりすぎれば肥満の原因になりますので、鮮度の良いものを極少量とりましょう。青魚も毎日食べる必要はありません。
肉の脂身の食べ過ぎはLDLコレステロール値を上げます。脂身は控えましょう。なお、肉も質の良いタンパク源ですので、肉自体を避ける必要はありません。
また、コレステロールというと油脂のイメージが強いですが、実際には糖質の過剰摂取もLDLコレステロール値を上げます。併せて食べ過ぎに注意しましょう。
橋本病の方は腸内環境が悪化しやすいことが分かっています。腸内環境の悪化は、橋本病そのものだけでなく、便秘や肌荒れ、不眠やⅡ型糖尿病をはじめ、多くの不調や病気のリスクを高めてしまいます。体質に合った発酵食品や、水溶性食物繊維の多い野菜を食べ、腸内環境を改善しましょう。
大豆イソフラボンを多く含む食べ物、飲み物、プロテイン、サプリメントは、食べ過ぎることで甲状腺ホルモンの働きに影響を与えることがあります。体質に合わないと感じたら摂取を控えましょう。↓詳しくはこちらのブログ記事をご覧下さい↓
これまで習慣的に食べてきたものを急にやめると、かえって栄養不足が起こったり、新たな不調を感じることがあります。また、橋本病の方におすすめと言われる食品であっても、個別の体質によって合わないこともあります。食事療法を始める際は、栄養バランス全体の見直しが大切です。
減量ダイエットや不調改善のために食事療法を始めたいという方のために、詳しい食事療法のご紹介や栄養カウンセリングを行っています。