· 

亜鉛不足と甲状腺機能低下の関係 ―サプリメントだけで改善するわけではない理由

「亜鉛不足は甲状腺機能低下の原因になる?」このような情報を見聞きしたことがある方もいるのではないでしょうか? 

 

亜鉛は免疫や皮膚の健康だけでなく、甲状腺ホルモンの代謝にも関わる重要なミネラルです。ただし、誤解されやすい点も多く、「亜鉛を飲めば甲状腺機能が回復する」といった単純な話ではありません。

亜鉛は「甲状腺ホルモンの活性化」に関わる

甲状腺では主にT4(チロキシン)というホルモンが作られます。

 

しかし、T4はそのままでは十分に働かず、体内でT4は活性型のT3に変換されて強い作用を発揮します。

 

この変換を行う酵素が脱ヨード酵素(deiodinase)です。

 

亜鉛はこのホルモン代謝の過程に関わっており、亜鉛不足ではT4からT3への変換が低下する可能性が指摘されています。

 

実際、亜鉛欠乏の人ではT3が低下し、T4は正常という状態(Low T3)が見られる場合があります。

 

ただし重要なのは、これは甲状腺そのものの病気ではなく、二次的な機能低下として起こる可能性があるという点です。

亜鉛サプリで甲状腺機能は改善する?

ここは非常に誤解されやすいポイントです。

 

複数の研究をまとめたシステマティックレビューでは、亜鉛補給が甲状腺ホルモン濃度に与える影響について、結果は一貫しておらず、結論は不確かとされています。

 

つまり、亜鉛不足の人では改善する可能性がありますが、誰にでも効果があるわけではない、ということです。

 

また、亜鉛不足ではない人が追加で亜鉛サプリメントなどを摂取しても甲状腺機能がさらに良くなったり、病気が治ったりするという確かなデータはありません。 

 

甲状腺機能低下の原因は、必ずしも亜鉛不足によるものではないので、過度な期待はかえって様々なリスクにつながる恐れがあります。

内服治療中の方は甲状腺ホルモン薬との併用に注意

甲状腺機能低下症の治療では甲状腺ホルモン薬を服用します。

 

ここで注意したいのが、ミネラルとの相互作用です。

 

亜鉛を含むサプリメントを甲状腺ホルモン薬と同時に摂取すると、薬の吸収が低下する可能性があります。

 

その結果、甲状腺ホルモンのコントロールが悪化するといったリスクもあります。 

 

サプリメントを使う場合は、医師や管理栄養士に相談した上で、薬と時間をあけることが重要です。

亜鉛ばかり意識すると鉄不足になることも

もう一つ大切なのが、栄養バランスです。

 

亜鉛の摂取量が多くなると、鉄の吸収が阻害されることがあります。

 

実際に、亜鉛補給でフェリチン(鉄貯蔵)が低下した例も報告されています。

 

鉄も甲状腺ホルモンの代謝に不可欠であるため、鉄不足もまた、甲状腺ホルモンの代謝やエネルギー代謝を低下させる可能性があります。 

 

つまり、亜鉛だけを増やせば良いわけではないということです。

大切なのは「不足を補うこと」

亜鉛と甲状腺機能の関係をまとめると 

  • 亜鉛は甲状腺ホルモン代謝に関わる重要な栄養素
  • 不足している場合は補うことが重要
  • しかしサプリメントで劇的に改善するという確立した証拠はない 

というのが現在の科学的な理解です。

 

甲状腺機能を整えるためには亜鉛だけに注目するのではなく、食事全体のバランスを整えることが基本です。

 

まずは普段の食事を振り返ってみてはいかがでしょうか? 

関連記事

参考文献

Arczewska KD, Piekiełko-Witkowska A. The Influence of Micronutrients and Environmental Factors on Thyroid DNA Integrity. Nutrients. 2025 Jun 21;17(13):2065. doi: 10.3390/nu17132065.

 

 

Beserra JB, Morais JBS, Severo JS, Cruz KJC, de Oliveira ARS, Henriques GS, do Nascimento Marreiro D. Relation Between Zinc and Thyroid Hormones in Humans: a Systematic Review. Biol Trace Elem Res. 2021 Nov;199(11):4092-4100. doi: 10.1007/s12011-020-02562-5. Epub 2021 Jan 7. Erratum in: Biol Trace Elem Res. 2021 Dec;199(12):4876. doi: 10.1007/s12011-021-02597-2.