
「前より疲れやすい」「体重は増えていないのに体が重い」
甲状腺機能低下症の方には、こんな変化を感じる人が少なくありません。
その背景として近年注目されているのが、サルコペニア肥満。
これは「筋肉が減って脂肪が増えている状態」のことで、太って見える肥満タイプもいれば、体型が普通に見える“隠れ肥満”タイプも含まれます。
どちらのタイプであっても、筋肉の減少が健康リスクを高めてしまう点は共通しています。
サルコペニア肥満とは?隠れ肥満との違い
サルコペニア肥満は
- 筋肉量・筋力の低下(サルコペニア)
- 脂肪量の増加(肥満)
この2つが同時に起こっている状態です。
つまり、体型が明らかに太って見える人だけでなく、体重が普通でも実は筋肉が減って脂肪が増えている“隠れ肥満”の人のいずれもがサルコペニア肥満に含まれます。
特に甲状腺機能低下症では、筋肉維持が難しく、代謝低下に伴って脂肪がつきやすくなるため、どちらのタイプも起こりやすいのです。
なぜ甲状腺ホルモンが影響するの?
甲状腺ホルモン(とくにT3)は、筋肉のエネルギー代謝・修復・生成を支える重要なホルモンです。
研究でも以下のような報告があります。
- 甲状腺機能低下は握力低下・歩行スピード低下など、サルコペニアの指標と関連
- 正常範囲でもT3が高い方が筋肉量・筋力が高いとされる報告※
つまり、甲状腺ホルモンが低いと、筋肉が作りにくく、分解されやすくなり、筋肉減少→ 脂肪蓄積 → 代謝低下という悪循環が起こりやすいのです。
※正常範囲を超え甲状腺ホルモン値が高すぎる場合も筋力低下を引き起こします
サルコペニア肥満を放置するとどうなる?
サルコペニア肥満が特に問題になる理由は、筋肉減少×脂肪増加の相乗効果で代謝が大きく落ちるからです。
その結果:
- 太りやすく、痩せにくい
- インスリン抵抗性が高まり、糖尿病リスクが上昇
- 血圧・脂質異常など生活習慣病が悪化しやすい
- 疲れやすさ・冷えなど甲状腺症状を悪化しやすい
- 高齢では転倒・骨折・要介護リスクが上昇
見た目が太っている人だけでなく、普通体型の人でもこのリスクは同じです。
当てはまる人は要注意
以下の項目に複数当てはまる場合、サルコペニア肥満の可能性があります:
- 以前より疲れやすい、持久力が落ちた
- 階段で息が上がる
- 物を持つ力が弱くなった
- ダイエットしても痩せにくい
- 食べていないのに体脂肪が増える
- 体重は変わらないのに体が重い
これらは、筋肉量の低下が始まっているサインです。
今日からできる対策(甲状腺機能低下症の方向け)
① 無理な食事制限をしない
太っているからと言って、極端な糖質制限やカロリー制限をしてしまえば、T3低下を招き、さらに筋肉が落ちます。
② タンパク質の主菜を含む食事を1日3食に均等に
筋肉の主な材料はタンパク質です。食事を抜いたり、タンパク質のおかずをしっかり食べなければ、筋分解が進み、サルコペニアが悪化しやすくなります。
③ レジスタンストレーニングを週2〜3回
スクワット、ヒップリフト、軽いダンベルなど、無理のない所からはじめ、習慣付けましょう。①の食生活の改善と併せて行うことで、筋力アップを目指しましょう。
④ 体組成をチェック
体重だけでは隠れ肥満が見逃されてしまうことがあります。
筋肉量・体脂肪率・内臓脂肪などを測ると、自分の状態が正しく把握できます。
⑤ 甲状腺ホルモンの定期的な検査
甲状腺刺激ホルモンや甲状腺ホルモン(TSH・FT3・FT4)のバランスが筋肉維持に影響するため、治療中の方は調整が重要です。
まとめ
サルコペニア肥満は、太っている人だけの問題ではありません。
普通体型でも、筋肉が落ちて脂肪が増えている“隠れ肥満”のケースも少なくなく、甲状腺機能低下症の方は特に起こりやすい傾向があります。
しかし、バランスの食事、減量をする場合も無理のない食事管理、軽い筋トレ習慣、体組成のチェック、甲状腺機能の適切な治療といった習慣によって、進行を防ぎ、体調改善にもつながります。
「太っていないから大丈夫」と思わず、筋肉を守る生活を今日から始めてみませんか?
参考文献
Nappi A, Sagliocchi S, Cicatiello AG, Miro C. Thyroid hormone imbalance, malnutrition, and sarcopenia: a triad of muscle health challenges. J Basic Clin Physiol Pharmacol. 2025 Nov 17;36(6):351-357. doi: 10.1515/jbcpp-2025-0160.
Wei J, Hou S, Hei P, Wang G. Thyroid dysfunction and sarcopenia: a two-sample Mendelian randomization study. Front Endocrinol (Lausanne). 2024 Sep 5;15:1378757. doi: 10.3389/fendo.2024.1378757.






