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甲状腺機能低下症とSIBO(小腸内細菌異常増殖)――意外な“腸-甲状腺”の関係

私たちの身体は「腸」「甲状腺」「免疫」「代謝」が互いに影響しあう複雑なネットワークで成り立っています。とりわけ、甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンが不足して代謝や体内機能が低下する状態)と、小腸内細菌異常増殖症(SIBO)(小腸に細菌が過剰に増えることで消化・吸収・腸内環境に乱れをきたす状態)の間に、近年「関連あり」のエビデンスが増えてきています。

なぜ“甲状腺が弱る”と“腸に細菌が増えやすい”のか?

1. 腸の動きが低下するため

甲状腺ホルモンが低下すると、胃から小腸、そして大腸へと内容物を運ぶ動きが遅くなることが報じられています。 

 

こうした蠕動運動の低下などによって小腸の内容物が滞ると、通常は少数で留まるべき細菌が過剰に増えやすくなり、SIBOの温床となる可能性があります。

2.栄養素・ミネラルの吸収・甲状腺ホルモン薬の吸収が影響を受けるため

小腸は甲状腺ホルモンの代謝や多くのミネラル(鉄、ヨウ素、セレン、亜鉛など)の吸収が行われる部位です。これらのミネラルは甲状腺ホルモンの生成や正常な働きにも欠かせないものですが、SIBOがあると腸内環境が乱れ、吸収が妨げられる可能性があります。

 

さらに、甲状腺ホルモン薬の服薬治療中の場合、これらのミネラルが腸に留まることで、ホルモン薬の吸収が妨げられる恐れがあります。

 

実際、「甲状腺機能低下症の人ではSIBOが発生しやすく、逆にSIBOを有する人では甲状腺機能低下のリスクもあがる」とする報告もあります。 

 

ただ、甲状腺ホルモン薬の内服治療を受けている人では、そのリスクが軽減されるという報告もあり、一概には言えません。

3. 自律神経・腸管免疫の影響

甲状腺ホルモンの低下は消化管の運動や粘膜免疫、バリア機能に影響を及ぼすため、腸内環境が不安定になり細菌バランスが崩れやすくなります。

実際どれくらい関連がある?

いくつかの大規模データによると、甲状腺機能低下症の人がSIBOを発症するリスクは通常の人よりも約2~3倍高いという報告が出ています。

私たちができること:腸+甲状腺を整えるために

まず、甲状腺ホルモンバランス(TSH, FT4など)が適切かどうかを確認すると同時に「慢性的な膨満感・ガス・便通の異常」がある場合には、SIBOや腸運動の低下も視野に入れましょう。

 

甲状腺治療中の方でも、便秘や腸の動きが明らかに“鈍い”と感じるときは、食事・運動・腸活(発酵食品、食物繊維、プレバイオティクスなど)を見直してみましょう。

 

腸が滞る(=食べ物がゆっくり進む)と、腸内に滞留した内容物が細菌の餌になりやすいため、適度な水分・食事回数、動きを意識することが有効です。

 

こまめな水分補給を心がけ、間食を控えましょう。また、運動を習慣付けることで腸の働きを促しましょう。 

 

甲状腺ホルモンの吸収にも腸の健康が影響するため、「甲状腺薬を飲んでいるがなかなか症状が改善しない」という場合、服薬と食事の間隔を十分に開けましょう。

注意したいこと

この関係性は「甲状腺機能低下症だから必ずSIBOになる」「SIBOがあるから必ず甲状腺が悪くなる」といった因果関係が確定しているわけではありません。

 

SIBOの原因は他にもさまざまなものがあり、また、腸内環境は食生活そのものの影響も強く受けています。

 

また、人により、あるいはタイミングより、腸活をすることで腸内環境の悪化に追い打ちをかけてしまう恐れもあります。 

 

あくまで甲状腺機能低下症とSIBOの関連性が増してきたという段階であり、個々の症状や状態に応じて医師や管理栄養士と相談することが重要です。

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参考文献

Brechmann T, Sperlbaum A, Schmiegel W. Levothyroxine therapy and impaired clearance are the strongest contributors to small intestinal bacterial overgrowth: Results of a retrospective cohort study. World J Gastroenterol. 2017 Feb 7;23(5):842-852. doi: 10.3748/wjg.v23.i5.842. 

 

Efremova I, Maslennikov R, Poluektova E, Vasilieva E, Zharikov Y, Suslov A, Letyagina Y, Kozlov E, Levshina A, Ivashkin V. Epidemiology of small intestinal bacterial overgrowth. World J Gastroenterol. 2023 Jun 14;29(22):3400-3421. doi: 10.3748/wjg.v29.i22.3400.