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ヨウ素と甲状腺-ヨウ素の過剰摂取に注意―

橋本病とバセドウ病の方はヨウ素の過剰摂取に注意
橋本病とバセドウ病の方はヨウ素の過剰摂取に注意

ヨウ素(ヨード)は甲状腺の重要な成分であり、正しい量を摂取することは健康に良い影響をもたらしますが、過剰なヨウ素摂取は橋本病の方をはじめ、人によって潜在的な健康リスクをもたらすことがあります。

 

この記事では、ヨウ素の過剰摂取の影響と注意すべき理由について説明します。

ヨウ素と甲状腺の関係

ヨウ素は甲状腺ホルモンの重要な構成要素です。甲状腺ホルモンは代謝を調節し、健康な体調維持や成長に不可欠です。食事から摂取が必要な微量ミネラルの1つですので、不足はよくありませんが、日本では多くの場合、ヨウ素の過剰摂取が問題になっています。食べてはいけないものではありませんが、食べ過ぎれば甲状腺機能低下を引き起こす恐れがあります。日本以外の世界の多くの国では不足が問題になっています。

ヨウ素を取り過ぎた際の症状は?

  • 甲状腺の腫れ
  • 一時的な体重の増加
  • 急激な体重の減少
  • 不安
  • 手のふるえ
  • 心拍数の増加
  • 肌のかゆみや蕁麻疹
  • 吐き気や下痢、嘔吐

ヨウ素の取り過ぎによって甲状腺に炎症が起こり、甲状腺が腫れることがあります。甲状腺は首の付け根にある臓器です。

 

甲状腺ホルモンは代謝の調整を行うホルモンです。甲状腺ホルモンの合成に影響を与えるため、体重の増加や減少が起こることがあります。

 

また、過剰な交感神経の作用やアレルギー症状、消化器官への刺激などにより、上記のようなさまざまな症状が現れます。

 

症状の出方には個人差があります。なかには無症状の場合もあります。

 

甲状腺疾患の素因のある方は、甲状腺疾患の悪化につながる恐れがあります。

ヨウ素過剰摂取のリスク

ヨウ素を取り過ぎると、甲状腺ホルモンの合成に影響を与える恐れがあります。健康な方でも一時的に上記のような影響が出る場合があり、橋本病やバセドウ病をはじめ甲状腺に問題のある方は、悪影響が大きくなります。具体的な影響は次の通りです。

 

甲状腺炎症の悪化: 過剰なヨウ素摂取は、甲状腺炎症を引き起こす可能性があります。

 

甲状腺機能の低下:甲状腺ホルモンの材料であるヨウ素をたくさんとれば、甲状腺ホルモンの合成量が増えるように思うかもしれません。ところが、実際には甲状腺はヨウ素の過剰な取り込みを阻止するため、甲状腺機能が低下します。

 

自己免疫反応の増加: 橋本病の素因のある方は、ヨウ素過剰摂取によって橋本病の自己免疫反応を刺激し、甲状腺への攻撃を増強することがあります。

 

甲状腺機能の亢進:一方で、ヨウ素の過剰摂取が甲状腺機能を亢進させることもあります。

ヨウ素は摂取上限のある栄養素

あまり知られていませんが、厚生労働省の食事摂取基準は食事から摂取するヨウ素量に対し、耐用上限量※を設けています。

 

甲状腺に問題のない方でも過剰摂取に注意が必要な栄養素ですので、橋本病やバセドウ病のような自己免疫甲状腺疾患を持つ人々は、特にヨウ素摂取に慎重でなければなりません※2。

 

※1. 耐用上限量とは習慣的な摂取量が「耐用上限量」を超えて過剰に摂取し続けると、健康リスクを伴うとされる上限の量です。参考文献:厚生労働省|日本人の食事摂取基準2020年版

※2. バセドウ病の治療中は甲状腺ホルモンの働きを抑制するためにヨウ素摂取が役立つとされています。主治医にご確認下さい。

ヨウ素が豊富に含まれる食品

ヨウ素は海藻類に豊富に含まれ、なかでも昆布にはとびぬけて多くのヨウ素が含まれています。毎日、昆布が含まれる食品や昆布出汁をとっている方はヨウ素を過剰に摂取しています。しばらく摂取を控えましょう。

 

ヨウ素はサプリメントにも含まれることがあります。マルチビタミン・ミネラルのサプリメントには、ヨウ素が含まれていることがあります。すでに食事からヨウ素を過剰に摂取している場合が多いため、多くの場合、サプリメントからの摂取は不要です。

まとめ

ヨウ素は甲状腺ホルモンの主原材料です。食べてはいけないものではありませんが、ヨウ素の過不足は、甲状腺ホルモンの不安定化につながります。多くの場合、過剰摂取が問題となりますので、ヨウ素の取り過ぎに注意をしましょう。