
「バセドウ病になってから、なんだかじんましんが出やすくなった……」
「アレルギー体質と甲状腺の病気って、何か関係があるの?」
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)と診断された方の中で、このような肌の痒みやアレルギーのような症状に悩まされている方は少なくありません。
実は近年の医学研究で、バセドウ病などの自己免疫疾患があると、体内で「ヒスタミン」というアレルギー原因物質に対して体が過敏になりやすいことが分かってきました。
今回は、バセドウ病とヒスタミンの意外な関係性と、日常の食事で気をつけるべきポイントを解説します。
1. なぜバセドウ病になるとアレルギー症状が出やすいの?
バセドウ病は、本来は体を守るはずの免疫が暴走し、自分の甲状腺を攻撃してしまう「自己免疫疾患」の一種です。
このとき体内で作られる「自己抗体(特に抗TPO抗体など)」が、実はアレルギーを引き起こす細胞(マスト細胞)のスイッチを刺激してしまうことが分かっています。
健康な人であれば、ダニや花粉などの「外敵」が入ってきた時だけアレルギー物質(ヒスタミン)が放出されます。しかしバセドウ病の方の体内では、自分の抗体のせいで、常にマスト細胞が「あと一歩でスイッチが押される」ような過敏な状態(ヒスタミンが出やすい状態)になっているのです。これが、じんましんや痒みが起きやすくなる原因です。
2. 魚の食中毒「ヒスタミン中毒」とは?
ここで、もう一つ注意したいのが「外から入ってくるヒスタミン」です。
サバ、イワシなどの青魚を常温で放置すると、食品の中に「ヒスタミン」という毒素が大量に作られてしまいます。これを食べることで起きるアレルギーにそっくりな食中毒を「ヒスタミン中毒」と呼びます。
ヒスタミン中毒は、アレルギー体質に関係なく、誰でも大量に食べれば発症する「化学中毒」です。主な症状には、顔面の紅潮、激しい動悸、じんましん、頭痛などがあります。
3. バセドウ病の人が「ヒスタミン中毒」に特に注意すべき理由
「体内のアレルギー」と「魚の食中毒(外からのヒスタミン)」。
一見、別物に見えるこの2つですが、バセドウ病の体の中では「危険な足し算」が起きてしまう危険性があります。
① 少ない量でも症状が出やすい(感受性の高さ)
前述の通り、バセドウ病の方の体は、すでに自分の抗体のせいでヒスタミンに対して限界ギリギリまで過敏(閾値が下がった状態)になっています。
そこに魚から「外因性のヒスタミン」がドッと入ってくると、普通の人ならなんともない微量なヒスタミンであっても、体が耐えきれずに重いアレルギー様症状を起こしてしまうリスクがあります。
② 心臓へのダブルパンチ(心血管リスク)
バセドウ病のときは、甲状腺ホルモンの影響で、もともと脈が速く(頻脈)、心臓がフルマラソンを走っているようにがんばっている状態です。
そこにヒスタミン中毒による「血管拡張」や「激しい動悸」が加わると、心臓への負担が倍増し、不整脈や急激な血圧低下など、重篤な合併症を引き起こす恐れがあります。
4. 今日からできる!食事対策
外から入ってくるヒスタミンを体に入れないために、以下の3つの食習慣を意識しましょう。
- 魚は「即冷蔵・即冷凍」: 青魚(サバ、イワシなど)を購入したら、常温放置は絶対NG。すぐに冷蔵庫や冷凍庫へ入れましょう。
- 加熱を過信しない: ヒスタミンは熱に非常に強く、一度作られると煮ても焼いても消えません。「火を通せば古い魚でも大丈夫」という考えはやめましょう。
- 口がピリピリしたら食べない: ヒスタミンが多く含まれる魚を食べると、舌や唇がピリピリすることがあります。違和感があったらすぐに食べるのをやめてください。
5. 【超重要】「抗甲状腺薬の副作用」による薬疹にも注意
ここまで「体内のアレルギー」と「魚の食中毒」のお話をしてきましたが、バセドウ病治療中の方は最も気をつけなければならない「発疹・かゆみ」がもう一つあります。
それは、バセドウ病の治療薬(メルカゾールやチウラジールなど)を飲み始めてから起きる「薬の副作用による皮膚症状(薬疹)」です。
- 薬疹が起きる時期: 治療を始めてから数日〜数週間以内に現れることが多いです。
- ヒスタミンとの見分け方: 魚によるヒスタミン中毒は食べてから数分〜数時間で急激に起きますが、薬疹は薬が体に蓄積される過程でじわじわ、または突然持続的な発疹となって現れます。
抗甲状腺薬による薬疹は、放置すると重症化したり、白血球が減ってしまう別の深刻な副作用(無顆粒球症)のサインであったりすることもあります。
「薬を飲み始めてから出た発疹やかゆみ」は、食べ物のせいにせず、必ずすぐに主治医に相談してください。
まとめ:自分の体質を知って、安全に治療と食事を楽しみましょう
バセドウ病の体は、免疫の仕組み上、ヒスタミンの影響を受けやすい「デリケートな状態」にある場合があります。以下の2つを守りましょう。
- 魚は新鮮なうちに食べる(ヒスタミン対策)、食べ過ぎに注意する
- 治療中の皮膚の異変は、自己判断せず、すぐ病院へ(薬疹対策)
小さな意識と正しい知識で、体を大きなトラブルから守っていきましょう。体調に不安があるときは、医師に相談しましょう。
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参考文献
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)『医薬品医療機器情報提供ホームページ』:各医薬品添付文書(メルカゾール錠5mg/チウラジール錠50mg)
日本アレルギー学会 編集:『アナフィラキシーガイドライン2022』
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Landucci E, Laurino A, Cinci L, Gencarelli M, Raimondi L. Thyroid Hormone, Thyroid Hormone Metabolites and Mast Cells: A Less Explored Issue. Front Cell Neurosci. 2019 Mar 29;13:79. doi: 10.3389/fncel.2019.00079.






