会社の健康診断や人間ドックの結果を見て、「あれ?血糖値が高い……」と驚いた経験はありませんか?「普段から甘いものは控えている、ご飯やパン、麺類などの糖質制限も気をつけているのに、なぜ?」と首をかしげてしまう方も少なくありません。実は、血糖値が上がる原因は「食べ物(糖質)の摂りすぎ」や「生活習慣」だけではないのです。
今回は、糖質を制限していても血糖値が上がってしまう、見落としがちな体のメカズムについて分かりやすく解説します。
血糖値を動かすのは「糖質」だけではない
確かに、ご飯やパン、お菓子に含まれる「糖質」は、消化されてブドウ糖になり、血糖値を直接的に上昇させる最大の原因です。そのため、血糖値対策として食事を見直すのは間違っていません。
しかし、人間の体はそれほど単純ではありません。私たちの体内では、食事以外にも「ホルモン」が血糖値のコントロールに深く関わっています。
実は、人間の体の中で血糖値を「下げる」ホルモンはインスリンの1種類だけしかありません。
それに対して、血糖値を「上げる」働きを持つホルモンは複数存在します。その「血糖値を上げるホルモン」の1つが、喉のあたりから分泌される「甲状腺ホルモン」です。
甲状腺ホルモンと血糖値の意外な関係
甲状腺ホルモンは、全身の代謝を活発にする、いわば「体の元気のエンジン」のような役割を持っています。
しかし、この甲状腺ホルモンが何らかの原因で過剰に分泌されてしまうと、体の中のバランスが崩れてしまいます。これが「甲状腺機能亢進症」(代表的な病気にバセドウ病などがあります)と呼ばれる状態です。
甲状腺ホルモンが過剰になると、以下のような理由で血糖値が上がりやすくなります。
- 腸からの糖の吸収が急激に高まる
- 肝臓に蓄えられていた糖がどんどん血液中に放出される
- 血糖値を下げる「インスリン」の効き目が悪くなる
つまり、どんなに食事で糖質を控えていても、体の中から勝手に血糖値を上げるシグナルが出続けてしまうのです。
「ただの糖質制限不足」と勘違いしていませんか?
もし血糖値が高い原因が「甲状腺の病気」だった場合、いくら過酷な食事制限をしても血糖値はうまく下がりません。
それどころか、甲状腺機能亢進症には特有の症状があります。血糖値の高さに加えて、以下のようなサインに心当たりはありませんか?
- 以前よりたくさん食べているのに、なぜか体重が減る
- じっとしていても心臓がドキドキする(動悸)
- 手足が細かく震える
- 汗を異常にかきやすく、暑がりになった
- いつもイライラしたり、落ち着かなかったりする
「最近疲れているのかな」「ダイエットの成果が出て体重が減ったんだ」と見過ごしてしまいがちですが、これらは甲状腺からのSOSかもしれません。
糖尿病の治療中なのに「血糖値が下がらない」隠れた理由のケースも
甲状腺ホルモンの異常は、すでに糖尿病の診断を受けて治療をしている方にとっても見逃せない問題です。
実は、糖尿病の方の約10人に1人は甲状腺の病気を併発しているといわれています。糖尿病には大きく分けて「1型」と「2型」の2つのタイプがありますが、そのどちらにおいても甲状腺疾患との深い関わりが指摘されています。
① 1型糖尿病と甲状腺疾患1型糖尿病は、主に「自己免疫の異常」によってインスリンが作れなくなる病気です。同じくバセドウ病などの甲状腺疾患も「自己免疫」が原因であるため、1型糖尿病の方は体質的に甲状腺の病気を合併しやすいことが分かっています。
② 2型糖尿病と甲状腺疾患生活習慣などが背景にある2型糖尿病の方でも、甲状腺疾患の併発は珍しくありません。甲状腺ホルモンが過剰になると、2型糖尿病の特徴である「インスリンの効きにくさ(インスリン抵抗性)」がさらに悪化してしまいます。
これらの治療中の方で、食事療法をがんばり、内服薬やインスリン治療をしっかり行っているのにもかかわらず、「なぜか最近、血糖値のコントロールがうまくいかない」「急に数値が悪化した」という場合、その陰に甲状腺疾患が隠れていることがあります。
原因が甲状腺にある場合、糖尿病の治療だけを強化しても数値は改善しません。しかし、甲状腺の治療を並行して行うことで、血糖値が安定するケースもあります。
まとめ:高血糖が続くなら医療機関へ
「血糖値が高い=食事の不摂生」というイメージが強いですが、今回ご紹介したように、1型・2型糖尿病の背景や、それ以前の段階で甲状腺の病気が隠れているケースもあります。
糖質を控えているのにもかかわらず健康診断で高血糖を指摘された方や、糖尿病の数値が安定しない方、気になる体調の変化がある方は、自己判断で食事制限を強化する前に、まずは内科や内分泌内科などの医療機関を受診しましょう。
血液検査によって血糖値だけでなく、甲状腺ホルモンの値も調べることができます。
自分の体の正しい状態を知ることが、健康への一番の近道です。
参考文献
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