
「最近、急に視力が落ちた気がする」「バセドウ病になってから目が疲れやすくなった……」
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)と診断された方の中で、このような目の違和感を抱える方は少なくありません。
一見、関係がなさそうに見える「バセドウ病」と「視力」。実は、バセドウ病に伴う「甲状腺眼症」が原因で、近視のような見えにくさや目のトラブルが生じることがあります。
今回は、バセドウ病と近視の関係、そして注意すべき目の症状について分かりやすく解説します。
1. バセドウ病そのものが「近視」の原因になる?
結論から言うと、バセドウ病(ホルモンバランスの異常)が直接的に「近視(眼軸が伸びる、または屈折力が変わる状態)」を引き起こすことはありません。
しかし、バセドウ病の患者さんの多くが「目が悪くなった」「ピントが合わない」と感じるのは、近視そのものではなく、「甲状腺眼症(こうじょうせんがんしょう)」という合併症が原因である可能性が高いのです。
なぜ「近視」のように感じるのか?
甲状腺眼症が進行すると、目の奥(眼窩)にある脂肪や、目を動かす筋肉(外眼筋)が炎症を起こして腫れてしまいます。その結果、眼球が前方に押し出されたり(眼球突出)、視神経が圧迫されたりすることで、「視界がぼやける」「視力が下がる」といった症状が現れます。これが、本人にとっては「近視が進んだ」ように感じられるのです。
2. 注意したい「甲状腺眼症」の代表的な症状
バセドウ病に関連する目の不調には、近視以外にも以下のような特徴的なサインがあります。
複視(物が二重に見える): 目の筋肉が腫れてスムーズに動かなくなるため、左右の視線がズレてしまいます。
- 眼球突出: 目が前方に突き出してきます。
- 眼瞼後退(がんけんこうたい): 上まぶたが吊り上がり、白目が目立つようになります。
- ドライアイ・充血: まぶたが閉じにくくなることで目が乾燥し、ゴロゴロとした異物感や充血が生じます。
これらの症状は、甲状腺ホルモンの数値が正常になっても、目だけに症状が残ったり進行したりする場合があるため、注意が必要です。
3. 日常でできる目のケアとドライアイ対策、食事のポイント
バセドウ病による目のトラブル、特に乾燥(ドライアイ)は、角膜を傷つける原因になります。点眼薬による治療はもちろん大切ですが、日々の食事からもケアを意識してみましょう。
ドライアイ対策の一つとして、粘膜を健康に保つビタミンAが豊富な「緑黄色野菜」を積極的に摂取することも、目の健康維持に役立ちます。
また、以下のポイントにも気をつけてください。
- 禁煙: 喫煙は甲状腺眼症を悪化させる最大の要因と言われています。
- 目を休ませる: スマホやパソコンの長時間使用を避け、意識的に瞬きを増やしましょう。
- 遮光: まぶしさを強く感じる場合は、サングラスを活用して目を保護してください。
4. 視力に違和感を覚えたら「眼科」へ
バセドウ病と診断された方、あるいは疑いがある方で、「最近見え方がおかしい」と感じたら、早めに眼科を受診してください。
特に、甲状腺眼症の診断には、一般的な視力検査だけでなく、MRIやCTによる目の奥の検査、視野検査などが必要です。甲状腺の主治医と連携している眼科を選ぶと、よりスムーズな治療が受けられます。
まとめ:放置せず専門医に相談を
バセドウ病と近視に直接の因果関係はありませんが、「甲状腺眼症による視力低下」は見逃してはいけないサインです。
早期に発見し、適切な治療(ステロイド治療や放射線治療など)を行うことで、症状の悪化を防ぐことができます。「ただの疲れ目かな?」と自己判断せず、専門医のアドバイスを受けながら、体と目の健康を同時に守っていきましょう。
参考文献
厚生労働省:e-ヘルスネット「緑黄色野菜」
日本眼科学会:目の病気, 甲状腺眼症
日本甲状腺学会:甲状腺疾患 診断・治療ガイドライン






