健診結果が「正常」でも安心できない?潜在性甲状腺機能低下症に潜む「隠れ心血管リスク」とは

潜在性甲状腺機能低下症の隠れ心血管リスク
潜在性甲状腺機能低下症の隠れ心血管リスク

「健康診断の数値は正常なのに、なぜか体がだるい」「コレステロール値はそこまで悪くないのに、心臓への負担が心配……」。そんな悩みをお持ちではありませんか?

 

実は、甲状腺ホルモンがわずかに不足する「潜在性甲状腺機能低下症」が、将来の心筋梗塞や狭心症などの心血管疾患リスクを、私たちが思っている以上に高めている可能性が最新の研究で明らかになりました。

  

今回は、2025年に発表された重要な論文をもとに、数値には表れにくい「隠れたリスク」の正体と、今日からできる対策について解説します。

潜在性甲状腺機能低下症とは?

甲状腺はのどぼとけの下にある小さな臓器で、全身の代謝をスムーズにする「やる気ホルモン」を出しています。 

 

このホルモンが少しだけ足りなくなり、脳からの指令(TSH:甲状腺刺激ホルモン)だけが高くなっている状態を「潜在性甲状腺機能低下症」と呼びます。明らかな症状が出にくいため、見逃されやすいのが特徴です。

「数値が正常」でもリスクが上がる衝撃の事実

これまでは、「甲状腺の機能が落ちると、コレステロール値や血圧が悪化し、その結果として心臓病のリスクが上がる」と考えられてきました。

 

しかし、最新のメタ解析論文では、驚くべき見解が述べられています。

  

7万人ものデータを分析した結果、「血圧やコレステロール、炎症の数値がそれほど悪くない人であっても、潜在性甲状腺機能低下症があるだけで心血管疾患のリスクは上昇している」ことがわかったのです。

なぜ数値が悪くないのにリスクが上がるのか?

論文では、一般的なリスク因子(脂質・血圧・血糖値)の悪化だけでは、このリスク上昇を十分に説明できないと指摘しています。つまり、甲状腺ホルモンのわずかな不足が、血管や心臓に対して直接的にダメージを与えている可能性があるのです。

年齢や性別に関わらず注意が必要

この研究のもう一つの重要なポイントは、この傾向が「年齢や性別に関わらず一貫して見られた」という点です。 

 

「若いから心臓病なんて先の話」「女性だから大丈夫」と決めつけず、甲状腺の数値を適切に管理することが、将来の健康を守る鍵となります。

今日からできる!食生活の3つのポイント

心血管リスクを抑えるためには、心臓に優しい食生活をベースにしつつ、甲状腺特有のポイントに気を配ることが大切です。

 

1. 心血管疾患の予防の基本として肉の脂身などの飽和脂肪酸の過剰摂取を控え、その代わりに、青魚やえごま油などに含まれるオメガ3を習慣的に食生活に取り入れましょう。


2. 甲状腺機能を低下させるヨウ素の過不足に注意しましょう。ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料として必要不可欠ですが、過不足が続くと、甲状腺機能が低下してしまいます。昆布をはじめとする海藻類に多く含まれており、食習慣にもよりますが、日本では過剰摂取が起こりやすいとされています。毎日の過剰な摂取は控え、適量を楽しみましょう。


3. 野菜やキノコ類に含まれる食物繊維は、コレステロールの吸収を穏やかにしてくれます。

 

まとめ:自分の「数値」を正しく知ることから

「潜在性甲状腺機能低下症」は、自覚症状が少ない一方で、水面下で血管や心臓に影響を及ぼす恐れがあります。 

 

もし健康診断で「TSH(甲状腺刺激ホルモン)が高い」と指摘されたことがあるなら、たとえ他の数値が正常であっても、健康診断と、甲状腺ホルモンの定期的な受診を欠かさないようにしましょう。その上で、食生活を工夫しましょう。

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参考文献

Baretella O, Blum MR, Abolhassani N, Alwan H, Wildisen L, Del Giovane C, Tal K, Moutzouri E, Åsvold BO, Cappola AR, Gussekloo J, Iacoviello M, Iervasi G, Imaizumi M, Weiler S, Razvi S, Sgarbi JA, Völzke H, Brown SJ, Walsh JP, Vaes B, Yeap BB, Dullaart RPF, Bakker SJL, Kavousi M, Ceresini G, Ferrucci L, Aujesky D, Peeters RP, Bauer DC, Feller M, Rodondi N. Associations Between Subclinical Thyroid Dysfunction and Cardiovascular Risk Factors According to Age and Sex. J Clin Endocrinol Metab. 2025 Apr 22;110(5):e1315-e1322. doi: 10.1210/clinem/dgae860. Erratum in: J Clin Endocrinol Metab. 2025 Apr 22;110(5):e1730. doi: 10.1210/clinem/dgaf061. 

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