
甲状腺ホルモンが過剰になるバセドウ病では、特に動悸や頻脈、血圧上昇など心臓に関わる症状が出やすく、市販の風邪薬などの中に症状を悪化させる成分が含まれていることがあります。注意すべき成分と、飲む際ののポイントを整理しましょう。
市販の風邪薬で避けたい成分
① 交感神経刺激薬
咳・鼻づまりを改善する目的で使われますが、心拍数や血圧を上げる作用があります。
バセドウ病ではそもそも交感神経が活性化しやすいため、これらの成分が症状を悪化させ、まれに重篤な状態(甲状腺クリーゼ)を誘発することがあります。
目安:
「メチルエフェドリン塩酸塩」「プソイドエフェドリン塩酸塩」の成分表示に要注意
- メチルエフェドリン塩酸塩(咳止め、風邪薬によく含まれる)
- プソイドエフェドリン塩酸塩(鼻炎薬、鼻風邪薬によく含まれる)
- 「交感神経刺激作用あり」と注意書きがある薬は避ける
② ヨウ素(ポビドンヨードなど)
ヨウ素は甲状腺ホルモン生成に関わる微量ミネラルです。うがい薬やのどスプレーにはヨウ素(ポビドンヨード)を主成分とするものがあり、高濃度のヨウ素が含まれています。また、マルチビタミン・ミネラルのサプリメントにもヨウ素が含まれていることがあります。ヨウ素の過剰摂取が続くことで、甲状腺疾患を悪化させる恐れがあります。
目安:
- ヨウ素入りうがい薬・スプレーは常用しない
- サプリメントのヨウ素も避けて
③ 漢方薬の「麻黄(まおう)」含有製剤
麻黄は天然のエフェドリンを含んでおり、交感神経刺激作用があるために、動悸や不整脈を引き起こす可能性があります。葛根湯・小青竜湯・麻黄湯などに含まれています。漢方薬を飲む前にも、必ず医師・薬剤師に相談しましょう。
④ アスピリン(サリチル酸系)
解熱鎮痛薬として使われていますが、サリチル酸系の薬は血液中の甲状腺ホルモン結合を変化させ、遊離ホルモンを一時的に増やす可能性が指摘されています。これは重篤な甲状腺機能亢進状態(甲状腺クリーゼ)の引き金になる恐れがあります。自己判断での使用は避けましょう。
代替としてはアセトアミノフェンが一般的ですが、まずは医師に相談しましょう。
用法用量の前に“飲むべきでない状況”を見分ける
バセドウ病の治療薬である抗甲状腺ホルモン薬は、副作用として白血球(好中球)が減少する無顆粒球症を起こすことがあります。風邪の症状に似ていますが、抗甲状腺ホルモン薬の副作用の場合、“放置して様子を見る”のは危険です。
こんな症状が出たら要注意:
✔ 38℃以上の発熱
✔ のどの痛み・全身倦怠感
✔ 風邪薬を飲んでしまったが症状が改善しない
発熱や喉の痛みなどが「ただの風邪」と見分けにくいですが、該当する症状がある場合は、すぐに主治医または医療機関へ連絡し、血液検査を受けましょう。
甲状腺ホルモン値が安定している場合は?
なお、バセドウ病の治療により甲状腺ホルモン値が正常範囲で安定している方の場合、これらの市販薬が必ずしも直ちに問題になるとは限りません。
ただし、体質や治療状況によって影響の出方には個人差があり、動悸や不安感、脈が速くなるなどの症状が出やすい方もいます。
そのため、「数値が正常だから大丈夫」と自己判断せず、初めて使う市販薬や複数成分を含む総合感冒薬については、念のため医師や薬剤師に確認することが安心です。
風邪のときこそ食事が大切
風邪をひいたとき、薬だけに頼らず、食事で免疫力を支えることも大切です。
✔ 栄養バランスを意識する
栄養バランスの良い食事のなかで、良質なタンパク質(肉・魚・豆腐・卵など)、ビタミンC・A・E(野菜・果物)を摂ることで、免疫細胞の働きをサポートできます。風邪で食欲が落ちている際は、おかゆ、スープ、うどんなどに卵や野菜などを加え、工夫しながら栄養補給をしましょう。
✔ 水分補給
熱が出ると体内の水分が不足しやすくなります。水、お茶などでこまめに水分補給をしましょう。
まとめ:市販薬を選ぶときの3つのポイント
- 交感神経刺激薬・ヨウ素・麻黄・サリチル酸系は避ける
- 発熱・喉痛・倦怠感は無顆粒球症の可能性もあるため、症状の変化を見逃さない
- 薬だけでなく食事で免疫を支える
バセドウ病は、甲状腺ホルモンが高くなることで代謝が活発になり、体の働きが敏感な状態です。風邪のときに市販薬を何気なく使ってしまうと、心拍数や血圧に影響を受けやすくなることがあります。自己判断は避け、迷ったら必ず医師・薬剤師に相談しましょう。また、体調が悪いときにこそ栄養や休養をしっかり取ることが、治癒への近道になります。
参考文献
厚生労働省,「一般用漢方製剤の添付文書等に記載する使用上の注意」
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000778901.pdf
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA),「かぜ薬等の添付文書等に記載する使用上の注意について」
https://www.mhlw.go.jp/content/001313746.pdf
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA),「アスピリン」
https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/about-reviews/otc/0002.html
日本甲状腺学会・日本内分泌学会,「甲状腺クリーゼ 診療ガイドライン 2017 Digest版」






