
バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで体の代謝が大きく上がる病気です。動悸、息切れ、手の震えなどがよく知られていますが、実は「周期性四肢麻痺」という、あまり聞き慣れない合併症が起こることがあります。
周期性四肢麻痺とは?
周期性四肢麻痺とは、突然、手足に力が入らなくなる発作 が起こる状態です。数時間で自然に回復することが多いのですが、発作中は立ち上がれない、歩けない、箸を持てないなど、日常生活に大きな影響があります。
多くは男性に多いと言われていますが、女性でも起こることがあります。特にアジア人では発症しやすい傾向があり、日本でも散発的に報告されています。
甲状腺ホルモン値の高さに比例しないことも
周期性四肢麻痺は、バセドウ病が重症の場合に限って起こるわけではありません。
実際には、「甲状腺機能亢進の程度に関わらず」発作が生じることがあり、軽い亢進状態でも起こる例が知られています。
これは、発症のメカニズムが単純なホルモン値だけでなく、
- 筋肉内のカリウム移動
- インスリンの急上昇
- 遺伝的素因
など、複数の要因が重なることで引き起こされるためです。
なぜ起こるの?
バセドウ病で甲状腺ホルモンが多くなると、筋肉で働く「Na⁺/K⁺ポンプ」が活発になります。その結果、「血液中のカリウムが急に筋肉の中へ移動し、血中カリウムが下がる(低カリウム血症)」ことが発作の原因となります。
カリウムが低くなると、筋肉が「動いて」という信号を受け取りにくくなり、突然の脱力や麻痺が起きてしまうのです。
発作が起こりやすいタイミング
- 炭水化物を一度にたくさん食べた後(インスリンが急上昇するため)
- 激しい運動の後の休息時
- ストレスが強いとき
- アルコールの多量摂取
これらはカリウムのバランスを急に変化させやすく、注意が必要です。
予防と対処
まずはバセドウ病そのものの治療をきちんと行うこと。
甲状腺ホルモンが安定すれば、発作はほとんど起きなくなります。
発作を感じたら医療機関へ
自己判断でカリウムのサプリメントをとるなどの行為は非常に危険です。必ず受診し、医師に相談しましょう。
最後に:食生活のちょっとした工夫
- 白米やパンを一度に大量に食べない
- 甘いお菓子を控える
- 食事は1日3回に分ける
- 食物繊維やたんぱく質から先に食べる
- アルコールは控えめに
バセドウ病は治療により症状が軽快していきます。その上で、周期性四肢麻痺のような症状を正しく知り、日常生活で少し工夫を取り入れることで、安心して過ごすことができます。
参考文献
American Thyroid Association, Clinical Thyroidology for the Public,
HYPERTHYROIDISM, A 10-year analysis of thyrotoxic periodic paralysis.
https://www.thyroid.org/wp-content/uploads/publications/ctfp/volume7/issue2/ct_public_v72_6.pdf
Noso S, Babaya N, Hiromine Y, Ito H, Taketomo Y, Yoshida S, Niwano F, Monobe K, Minohara T, Okada T, Tsugawa M, Kawabata Y, Ikegami H. Contribution of Asian Haplotype of KCNJ18 to Susceptibility to and Ethnic Differences in Thyrotoxic Periodic Paralysis. J Clin Endocrinol Metab. 2019 Dec 1;104(12):6338-6344. doi: 10.1210/jc.2019-00672.






