
「健康診断でコレステロールが高いと言われ、食事や運動に気をつけても下がらない…」そんな経験はありませんか? 実は、脂質異常症の背景には「甲状腺の働き」が隠れている場合があります。特に橋本病や甲状腺機能低下症は、日本でも決して珍しくありません。
甲状腺ホルモンと脂質代謝の関係
甲状腺ホルモン(T3、T4)は、体内の代謝全般をコントロールする役割を担っています。脂質代謝においては以下のような働きがあります。
- 肝臓でのコレステロール分解・排泄を促進
- LDL受容体の発現を増やし、血中LDLコレステロールを下げる
- 中性脂肪やHDLコレステロールの代謝にも影響
つまり、甲状腺ホルモンが不足すると「LDLが高く、HDLが低くなる」という脂質異常の典型的パターンが生じやすいのです。
橋本病と脂質異常
橋本病は自己免疫によって甲状腺の働きが低下していく病気です。顕在性の甲状腺機能低下症ではもちろん、潜在性(血液検査でTSHのみが高い段階)でも脂質異常が出ることが報告されています。
「数値的にはまだ治療不要」と言われた方でも、コレステロール値には影響している可能性があります。
よくある見落とし
脂質異常症と聞くと「食べすぎ」「運動不足」と決めつけられがちです。しかし、思うようにコレステロールが下がらない場合、背景に甲状腺の異常が隠れていることもあります。なかには、スタチンなどの薬を使っても思うように効果が出ない場合に甲状腺疾患が背景に隠れていたということもあります。
検査のすすめ
- コレステロールが高め
- 食生活の改善や運動でも改善が乏しい
- 倦怠感や冷え、むくみなどの症状がある
これらに当てはまる方は、一度甲状腺ホルモン(TSH、FT4、FT3)や自己抗体の検査を受けることをおすすめします。
まとめ
脂質異常症と甲状腺機能低下症は切り離せない関係にあります。「生活習慣を整えても改善しない」と悩んでいる方にとって、甲状腺のチェックは解決の糸口となるかもしれません。
※甲状腺と脂質代謝、栄養管理の詳細については、電子書籍や栄養カウンセリングでも詳しく取り上げています。健康を根本から見直したい方はぜひ参考にしてみてください。
関連ページ
参考文献
Duntas LH. Thyroid disease and lipids. Thyroid. 2002 Apr;12(4):287-93. doi: 10.1089/10507250252949405.
Peppa M, Betsi G, Dimitriadis G. Lipid abnormalities and cardiometabolic risk in patients with overt and subclinical thyroid disease. J Lipids. 2011;2011:575840. doi: 10.1155/2011/575840. Epub 2011 Jul 18.