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ファスティングや間欠的断食法と橋本病

橋本病にファスティングや間欠的断食のダイエット法は不向きです
橋本病にファスティングや間欠的断食のダイエット法は不向きです

橋本病、甲状腺機能低下症では太りやすくなる場合があり、減量のためのダイエットをしている方が多くいます。ダイエット法にはさまざまなものがありますが、最近流行しているファスティングや間欠的断食法は橋本病の方にとっておすすめのダイエット法なのでしょうか?メリットデメリットについて紹介します。

橋本病と体重の増加

橋本病は甲状腺を刺激する自己抗体ができる自己免疫疾患です。甲状腺に慢性的な炎症が起こるため、慢性甲状腺炎※と呼ばれることもあります。

 

橋本病は甲状腺や甲状腺ホルモンのバランスによって3段階に分かれます。1つは自己抗体を保持するものの甲状腺ホルモン値は正常な橋本病、2つめは甲状腺ホルモンをつくるサインを出す甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値が少し高い潜在性甲状腺機能低下症、3つめは甲状腺刺激ホルモン値が高く甲状腺ホルモン値が低い甲状腺機能低下症です。

 

甲状腺ホルモンは基礎代謝を調整するホルモンであるため、潜在性甲状腺機能低下症や甲状腺機能低下症の場合、太りやすくなることがあります。そのために減量ダイエットを試みている方も多いのではないでしょうか。

 

ここでは最近話題の間欠的断食法と甲状腺や甲状腺ホルモンの関係についてお話をしたいと思います。

 

はじめに注意事項として、ファスティングは間欠的断食法よりもさらに長時間の絶食を伴うダイエット法ですので、橋本病の方にとって非常に危険であることをお伝えしておきます。ファスティングを検討している方はやめましょう。

 

ここではファスティングには触れませんが、間欠的断食法とデメリットは同じですので、このブログを参考にしてください。ファスティングの場合はデメリットの悪影響がさらに深刻なものになる恐れがあります。

 

※慢性甲状腺炎とは、甲状腺炎に慢性的な炎症が起こることです。そのため、橋本病以外にも慢性甲状腺炎に分類される病気があります。

間欠的断食法とは

間欠的断食法は、一定時間の間、絶食するダイエット法です。

 

間欠的断食の絶食時間にはいくつかのパターンがあり、16時間、週1日、週2日の絶食などが提案されています。流行している16時間断食の場合、1日の残りの8時間の間に食事をとることになります。朝食を抜いて昼食と夕食を食べるケースが一般的です。

 

絶食時間さえ我慢すれば食事は比較的自由に食べることができるという点が、このダイエット法の人気のポイントのようです。

間欠的断食法のエビデンス

間欠的断食法は根拠のない流行ダイエットのように見えますが、しっかりとしたエビデンスに基づき効果のある減量法です。食生活の柔軟性に加え、このような理由で多くの方が安心して実践してしまうのかもしれません。

 

しかし実際にはデメリットも多く、最近ではデメリットに関する報告が増えています。

間欠的断食法のデメリット

間欠的断食法の一番のデメリットは、食事を長時間我慢することにより、食事をとった際にかえって食べ過ぎてしまうことです。

 

このような反動による過食は体重の大きなリバウンドを招きます。リバウンドが起こると、ダイエットを始める前よりも体重が増えてしまったり、体脂肪量が増えてしまう恐れがあります。

 

それ以外の大きなデメリットとして甲状腺機能の低下があげられます。

間欠的断食法と甲状腺機能の低下

間欠的断食法は甲状腺機能を低下させます
間欠的断食法は甲状腺機能を低下させます

健康な方の場合、間欠的断食に伴う甲状腺機能の低下は一時的なものですが、橋本病の方にとっては、甲状腺機能低下をさらに悪化させる恐れがあります。

 

ある集団において間欠的断食終了後の甲状腺ホルモンの変化に関する調査報告がありました。

 

この報告によれば、甲状腺ホルモン薬の服用中の甲状腺機能低下症の方は、間欠的断食後に甲状腺ホルモンの分泌を促す甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値が大幅に上昇したとのことです。そのために甲状腺ホルモン薬の処方量を増やす必要性について言及されています。

 

また、間欠的断食後は筋力が低下していること、断食中に体重が減少した場合でも、断食終了後は再び体重が増加しやすいといった報告も見られます。

ファスティングや間欠的断食法は橋本病に不向き

理論上、橋本病の方に断食は不向きですが、このような調査報告からも橋本病の方に長時間の絶食を伴うダイエット法は不向きであることがわかります。

 

橋本病の方のなかには、このようなダイエットで一時的に減量に成功する方もいるのですが、次第に橋本病を悪化させる恐れがあります。

 

甲状腺ホルモン薬を服用中の方は、服薬量が増える、あるいは適切な処方を受けられないなどの問題を生じる恐れがあります。

無自覚の橋本病の方も注意

橋本病は決して珍しい自己免疫疾患ではなく、実は女性の10人に1人は橋本病です。

 

自己抗体のある橋本病や、潜在性の段階では症状があまり出ないことや、症状が出ても日常的な不調と区別がつかないために、見逃されていることがあります。

 

間欠的断食法はエビデンスのあるダイエット法であるにせよ、橋本病の方には不向きです。橋本病は女性に多い自己免疫疾患ですので、間欠的断食方は女性に不向きなダイエット法であると考えておいた方が良いでしょう。

間欠的断食法は心血管疾患による死亡リスクを高める

最近の大規模な調査では、間欠的断食によるダイエットは心臓病や脳卒中による死亡リスクを大幅に高めるという結果が出ています。

 

甲状腺機能低下症では高コレステロール血症が起こりやすく、心臓に負担のかかる食生活には十分な注意が必要です。この観点からも、間欠的断食法は橋本病に不向きです。

こちらの書籍では長時間の絶食をせず、「就寝中を絶食時間」として体質を改善する食事法をご紹介しています。橋本病の方にもおすすめです。

寝ている間に体質を改善する 睡眠間欠断食法
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参考文献

 

 

Or Koca A, Dağdeviren M, Altay M. Should the dose of levothyroxine be changed in hypothyroidism patients fasting during Ramadan? Turk J Med Sci. 2020 Jun 23;50(4):784-788. doi: 10.3906/sag-1911-28. 


American Heart Association Epidemiology and Prevention|Lifestyle and Cardiometabolic Health Scientific Sessions 2024, Abstract P192. 8-hour time-restricted eating linked to a 91% higher risk of cardiovascular death.