
橋本病(甲状腺機能低下症)は、甲状腺を刺激する自己抗体が作られる自己免疫疾患で、慢性甲状腺炎を引き起こします。この病気により、甲状腺ホルモンの分泌が低下し、基礎代謝が低下するため、体重増加の原因となることがあります。そのため、橋本病の方の多くは体重管理のためにダイエットを試みます。近年注目されているダイエット法には、ファスティングや間欠的断食(インターミッテント・ファスティング)があり、これらはダイエット法として人気を集めていますが、橋本病にとってはどうなのでしょうか?
今回は、ファスティングや間欠的断食が橋本病に与える影響と、そのメリット・デメリットについて詳しく解説します。
橋本病と体重の増加の関係
橋本病は、甲状腺に慢性的な炎症が起こり、その結果、甲状腺ホルモンの分泌が低下します。甲状腺ホルモンは基礎代謝を調整する重要な役割を持つため、甲状腺機能が低下すると基礎代謝が低くなり、太りやすくなる傾向があります。このため、減量を目指す方が多くいます。
橋本病は症状の進行により3段階に分けられます。1つ目は、自己抗体はあるものの、甲状腺ホルモン値が正常な状態。2つ目は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が高めで潜在的な甲状腺機能低下症。3つ目は、甲状腺ホルモンが低い甲状腺機能低下症です。
これらの段階で、特に2つ目と3つ目の状態では体重増加のリスクが高くなり、ダイエットを検討する方が増えるのです。
間欠的断食法とは?
間欠的断食は、一定時間の間に食事を制限するダイエット法です。一般的に流行しているのは「16時間断食」と呼ばれる方法で、16時間の断食時間を設け、残りの8時間内で食事をとるというものです。たとえば、朝食を抜いて昼食と夕食を摂るスタイルが一般的です。この方法の魅力は、長時間の絶食後に食事を摂ることができるため、食事制限に対するストレスが少ない点にあります。
間欠的断食の利点は、エビデンスに基づいた減量効果があることです。多くの研究結果がこの方法の有効性を裏付けており、体重減少に成功した人も多いと報告されています。
間欠的断食法のデメリット
しかし、間欠的断食にはいくつかのデメリットも存在します。最も大きなデメリットは、断食後に食べ過ぎてしまうことです。長時間の空腹感に耐えた反動で、食事の際に過食し、結果として体重が増えてしまう場合があります。この過食によってダイエット効果が逆転し、リバウンドが起こることも少なくありません。
さらに、間欠的断食は甲状腺機能にも影響を与える可能性があります。健康な人においては、間欠的断食による甲状腺ホルモンの低下は一時的なものですが、橋本病のような甲状腺機能低下症の方では、甲状腺機能が悪化する恐れがあります。ある研究によると、間欠的断食後に甲状腺刺激ホルモン(TSH)が上昇したことが報告されています。このため、甲状腺ホルモンの調整が必要となり、薬の量を増やさなければならない場合もあります。
間欠的断食と橋本病の関係

間欠的断食が橋本病に与える影響については、研究結果からも明らかです。間欠的断食が甲状腺機能に与える影響は、特に甲状腺機能低下症の方においては深刻なものになる可能性があります。断食後には筋力の低下や体重のリバウンドが報告されており、これが橋本病の病状をさらに悪化させるリスクを高めることが示唆されています。
また、間欠的断食は心血管系への負担も懸念されます。特に甲状腺機能低下症の場合では、高コレステロール血症を引き起こしやすいため、心臓に負担をかけるようなダイエット法は避けるべきです。
これにより、間欠的断食は橋本病の方にとっては非常に不向きな方法だと考えられます。
まとめ:橋本病の方には間欠的断食は避けるべき
間欠的断食は、ダイエット法として人気がありますが、橋本病には不向きです。間欠的断食によって甲状腺機能がさらに低下し、体重管理が難しくなる可能性があります。特に、断食後に過食が起こりやすく、体重が元に戻るだけでなく、病状を悪化させるリスクが高まります。
橋本病の方がダイエットを考える際には、医師と相談し、甲状腺ホルモンの管理を最優先にしながら、適切な食事法を選ぶことが重要です。ファスティングや間欠的断食は避け、健康的なライフスタイルを心がけることが、長期的な健康維持につながります。
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参考文献
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American Heart Association Epidemiology and Prevention|Lifestyle and Cardiometabolic Health Scientific Sessions 2024, Abstract P192. 8-hour time-restricted eating linked to a 91% higher risk of cardiovascular death.