「COVID-19と甲状腺疾患についてよくある質問」より

この記事は「COVID-19と甲状腺疾患についてよくある質問」※をもとに作成しました。
甲状腺疾患の皆さまが日常生活を送る上で役立つと考えられる部分を抜粋し、情報を共有したいと思います。
感染症対策を行う上で参考にして頂ければ幸いです。
自己免疫性甲状腺疾患とCOVID-19
Q. 橋本甲状腺炎やバセドウ病などの自己免疫性甲状腺疾患を持つ人は、COVID-19に感染しやすい、あるいはCOVID-19に感染した際に重症化するリスクが高いのでしょうか?
A. 米国疾病対策センター(CDC)は、免疫不全の人はCOVID-19による重症化のリスクが高いと公表しています。免疫不全の人は免疫システムが弱く、感染症と戦うのが難しくなります。しかし、免疫系は複雑であり、自己免疫性甲状腺疾患を持っているからといって、免疫が低下していたり、ウイルス感染を撃退することができないということではありません。
これまでのところ、自己免疫性甲状腺疾患を発症された方がCOVID-19に感染するリスクが高いといった事実や、COVID-19に感染した場合に重症化するリスクが高いといった事実は確認されていません。
しかしながら、当然、COVID-19感染を避けるために、全ての方が推奨されている手洗い及び手指の消毒と社会的距離を保つことを実践してください。
無顆粒球症とCOVID-19
Q. 甲状腺機能亢進症を発症し、抗甲状腺薬を服用している場合、COVID-19感染による症状と抗甲状腺薬の服用によって起こりうる副作用をどのように見分けるのでしょうか?
A. 抗甲状腺薬を服用している方のごく一部に、感染症と戦う免疫細胞の数が減少する無顆粒球症と呼ばれる副作用が起こることがあります。この副作用が起こった場合、発熱や喉の痛みなどの症状が出ることがあります。
これらの症状が出た場合は、服薬を中止し、直ちに医師に連絡をしなければなりません。発熱や体調不良の症状はCOVID-19感染症の症状と重なることもあるため、これが抗甲状腺薬の副作用なのか、あるいはCOVID-19に感染したのではないかと心配になるかもしれません。
Q. このような症状がある場合、自宅で自主隔離をした方が良いのでしょうか?
A. 発熱を伴う無顆粒球症は重篤な感染症である可能性があるため、自主隔離は大変危険です。無顆粒球症は、抗甲状腺薬を長期間服用している方や、薬の用量が低い場合(例えば、ある研究では15mg)ではあまり見られませんが、それでも発生する可能性があります。
抗甲状腺薬服用中に発熱やその他の感染症の症状が出てきた場合は、迷わず直ちに医師に連絡をし、指示を受けてください。
甲状腺疾患の方でCOVID-19感染症が疑われ、発熱、咳、またはその他の典型的な症状のある方は、抗甲状腺薬の使用にかかわらず、直ちに医師の診察を受けるべきです。
甲状腺結節の生検の延期について
「COVID-19と甲状腺疾患についてよくある質問」では、上記以外に、甲状腺結節の生検の延期についてのアドバイスや、甲状腺がんに関するアドバイス等についても触れています。
これらについては、治療に関するアドバイスが含まれるため、直接主治医にご確認下さい。
COVID-19と甲状腺疾患についてまとめ

基礎疾患の有無に限らず、まずは基本的な感染症予防対策を全ての方がとることが大切であることが分かります。
そして万が一に備え、ご自身の治療履歴(血液検査の結果や、処方箋のコピーなど)が分かるものを身近な場所に用意しておくことも重要です。
参考文献
アメリカ甲状腺学会「新型コロナウイルス(COVID-19)と甲状腺Q&A」
(2020年4月16日参照)