甲状腺疾患とビタミンDの関係

ビタミンDは、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)や橋本病(甲状腺機能低下症)をはじめ、潜在性甲状腺機能低下症(不顕性甲状腺機能低下症、橋本病の疑い)とも深く関わっていることが分かってきています。ビタミンDの役割や摂取法などについてお伝えします。
ビタミンDの主な働き
ビタミンDには、次のような重要な働きがあります。
- カルシウムの吸収を助け、骨の健康を維持
- 免疫機能をサポート
- インスリンの正常な働きを助ける
- 血圧の調整に関与
- うつ症状の予防をサポート
このように、ビタミンDは骨の健康から心のケアまで幅広い役割を担っている栄養素です。
日本人の多くが不足しているビタミン
2023年に行われた最新の大規模調査では、日本人の多くがビタミンDの不足傾向にあることが分かっています。
ビタミンDの摂取源や不足しやすい季節
- ビタミンDが豊富な食品を食べること
- 紫外線を浴びること
ビタミンDは食事から取り入れるだけでなく、日光浴によって皮膚で合成することもできます。
秋や冬は日照時間が短くなるため、不足しやすくなります。
ビタミンD不足のサイン
ビタミンDが不足すると、次のような症状が現れることがあります。
- 気分の落ち込み(うつ症状)
- 骨が弱くなる(骨粗しょう症のリスク)
- 筋力の低下
- 風邪をひきやすく、治りにくくなる
- 自己免疫性甲状腺疾患の自己抗体の増加
特に甲状腺疾患の方は、ビタミンD不足により自己抗体が増加する可能性があるとの報告もあります。
ビタミンDが豊富な食品

- サケ
- イワシやサンマ、ブリ、サバなどの青魚
- 天日干しのキノコ類(椎茸など)
これらにはビタミンDが豊富に含まれています。
ビタミンDは脂溶性ビタミンのため、油と一緒に摂ると吸収率がアップしますよ!
まとめ
甲状腺の機能が亢進または低下すると、ビタミンDが不足しやすくなる可能性があります。しかし、甲状腺疾患の治療において、ビタミンDの大量摂取が特に有益かどうかは、現時点では明らかではありません。とはいえ、ビタミンDはすべての人にとって必要な栄養素であり、不足している場合は適切に補うことが大切です。
秋冬はビタミンDが不足しやすいため食事から補給を心がけましょう。
参考文献
Miyamoto, Hiroyasu et al. Determination of a Serum 25-Hydroxyvitamin D Reference Ranges in Japanese Adults Using Fully Automated Liquid Chromatography–Tandem Mass Spectrometry. The Journal of Nutrition, Volume 153, Issue 4, 1253 - 1264
Planck T, Shahida B, Malm J, Manjer J. Vitamin D in Graves Disease: Levels, Correlation with Laboratory and Clinical Parameters, and Genetics. Eur Thyroid J. 2018 Jan;7(1):27-33. doi: 10.1159/000484521.
Rattanamusik N, Uitrakul S, Charoenpiriya A. Vitamin D Levels in Patients with Active and Remission Graves' Disease. Medicines (Basel). 2023 Jul 6;10(7):41. doi: 10.3390/medicines10070041.