甲状腺ホルモンは交感神経の働きと連動しているため、甲状腺の機能障害が起こることにより、交感神経の働きも不自然となり、傾眠や不眠等の睡眠障害を引き起こすことがあります。
橋本病/甲状腺機能低下症と睡眠障害
橋本病および甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモンの働きが低下します。それによって代謝の低下や交感神経の働きも不十分となるため、十分な睡眠をとっても1日中眠気を感じる症状を招くことがあります。
甲状腺機能が低下した状態を放置すれば、嗜眠(しみん)と呼ばれ、傾眠の症状が悪化する恐れがあります。
橋本病/甲状腺機能低下症と不眠
橋本病/甲状腺機能低下症では、睡眠を司るホルモンであるメラトニンの働きも不十分となるため、なかには寝つきが悪くなり、不眠の症状に悩む方もいます。
甲状腺機能障害による睡眠の問題は甲状腺ホルモンが影響しているため、甲状腺ホルモン薬の服用によって症状の改善が期待されます。
橋本病の経過観察中で服薬治療を要しない方は、食生活の見直しが睡眠の質を改善させる手掛かりとなります。
バセドウ病/甲状腺機能亢進症と不眠
バセドウ病では甲状腺機能が亢進し、これに伴って交感神経の働きが活発となるため、なかなか眠りにつけない不眠の状態を招きます。
抗甲状腺薬の投薬治療により、甲状腺ホルモン値が正常化することで、不眠の症状が改善されていきます。
メラトニンと睡眠
睡眠はメラトニンと呼ばれるホルモンが司っています。
メラトニンは食事から摂取するアミノ酸のトリプトファンから夜間に合成されます。
そのために、タンパク質不足をはじめ、栄養がアンバランスな食生活は睡眠障害の原因となります。
甲状腺ホルモンの影響によって睡眠障害が起こりやすい方は栄養バランスの良い食生活を心がけましょう。
メラトニンサプリメントと睡眠効果について
睡眠障害の改善効果を期待し、メラトニンのサプリメントの服用を考えている方もいらっしゃるかもしれません。
メラトニンは睡眠の質の改善や中途覚醒(夜中に目が覚めてしまい再び寝付くことが困難な状況)を減らし、睡眠時間を延長する効果が期待できます。
しかし、睡眠時間の延長効果はわずか20分程度との報告があったり、また、多くの副作用のリスクも懸念されています。
自己免疫疾患とメラトニンのリスク
日本ではメラトニンサプリメントの製造や販売はされていません。そのために、有効性や副作用に関する情報を探してもなかなか見つからないため、十分に注意が必要です。
ご自身で服用する場合は、個人輸入の形式で購入することになります。服用した際の影響についても自己責任となります。
参考までにフランスでのメラトニンサプリメント服用における注意事項をご紹介します。
フランスではメラトニンサプリメントの服用について、「自己免疫疾患」の方は「服用しないように」と注意を促しています。
橋本病やバセドウ病は自己免疫疾患ですので、メラトニンサプリメントの服用はすべきではないということです。
副作用のリスクが高いだけでなく、甲状腺機能低下症による代謝の低下、甲状腺機能亢進症治療中の抗甲状腺薬の影響により、メラトニンの作用が必要以上に長引いてしまう恐れがあるためです。
メラトニンサプリメントの副作用
メラトニンサプリメントの副作用として、めまいや片頭痛、悪夢、嘔吐や腹痛等の胃腸障害等があります。
妊娠を希望される方、妊娠中や授乳中の方は服用ができません。
また、てんかんをはじめ、何らかの治療を受けている方もご自身の判断で服用することは非常に危険です。
橋本病やバセドウ病と睡眠障害のまとめ
不十分な睡眠は疲労からの回復の遅れや、うつ傾向を招く恐れがあるため、早めの対策が必要です。
睡眠の問題で悩まれている方は、まずは食生活や睡眠を促す環境の改善、ストレス対策のためのリフレッシュをおすすめします。
また、睡眠障害が続く場合は、ご自身で解決しようとせず、医師へ相談しましょう。