潜在性甲状腺機能低下症と症状

潜在性甲状腺機能低下症とは甲状腺ホルモン(FT3,FT4)が基準値内のときに、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が高値である状態のことを言います。

 

TSHによる甲状腺への刺激を増やすことで、甲状腺ホルモンの合成・分泌量を維持している状態ですので、軽度に甲状腺機能が低下した状態です。

 

日本では健康な人の420%程度、潜在性甲状腺機能低下症の人がいるとされています。女性に多く、年齢が高くなるにつれて増加します。

 

 

全ての方が甲状腺機能低下症に移行するわけではありませんが、定期的な経過観察が必要です。

潜在性甲状腺機能低下症の症状とコレステロール異常や不妊リスクについて
潜在性甲状腺機能低下症の症状とコレステロール異常や不妊リスクについて

潜在性甲状腺機能低下症の症状


潜在性の段階では自覚症状は乏しいとされています。そのために、健康診断や甲状腺の腫れなどから偶然に見つかることが多いです。なかには、潜在性の段階でも、冷えや疲労感、肌の乾燥等、甲状腺機能低下症と同様の症状の出る方もいます。

潜在性甲状腺機能低下症と動脈硬化


潜在性甲状腺機能低下症の段階でもTSHの値が5μU/mLを超えると、脂質異常を起こしやすいことが分かっています。空腹時の総コレステロール、LDLコレステロール値及び中性脂肪値が上昇しやすくなります。

 

 

このような脂質代謝異常は動脈硬化のリスクを高めます。経過観察時や健康診断でコレステロール値や中性脂肪値を確認しましょう。

潜在性甲状腺機能低下症と不妊


甲状腺ホルモンは妊娠の成立や胎児の成長に重要な役割を担うホルモンです。そのために甲状腺ホルモンが不足すると不妊の原因となる恐れがあります。

 

 

潜在性甲状腺機能低下症で一般的には治療が不要な段階であっても、妊娠を希望する場合は甲状腺ホルモン薬の内服をすることがあります。医師にご確認下さい。

参考文献


厚生労働省、第90回分科会「甲状腺機能低下症について」https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/10/dl/s1020-5b_0001.pdf

 

Pearce EN, Wilson PW, Yang Q, Vasan RS, Braverman LE. Thyroid function and lipid subparticle sizes in patients with short-term hypothyroidism and a population-based cohort. J Clin Endocrinol Metab. 2008 Mar;93(3):888-94. doi: 10.1210/jc.2007-1987. Epub 2007 Dec 11.