甲状腺ホルモンは糖や脂質の代謝を調整しているため、バセドウ病・甲状腺機能亢進症及び、橋本病・甲状腺機能低下症のいずれにおいても、代謝異常に伴う様々な合併症のリスクが高まります。その代表的なものが肥満です。
肥満を避けるにはどうしたら良いのでしょうか?
甲状腺ホルモンには糖や脂質代謝の調整機能があります。
そのために甲状腺機能が低下することで基礎代謝の低下とともに、糖や脂質の代謝異常を起こしやすくなり、その結果、体重の増加を招いてしまいます。
橋本病や甲状腺機能低下症の方は甲状腺機能が低下するため、太りやすくなってしまいます。
バセドウ病の方は内服治療が進むことで、甲状腺機能が一時的に低下し、太りやすくなります。
治療が不要な段階の潜在性甲状腺機能低下症の方も、橋本病と同様に太りやすくなる傾向にあります。
食事を極端に減らすような無理なダイエットは甲状腺に負担を与え、減量がうまくいかないどころか、かえって太りやすくなり、大きなリバウンドとして跳ね返ってくる恐れがあります。
甲状腺ホルモンの働きを考慮しながら、栄養バランスのよい食事をとるようにしましょう。
甲状腺ホルモンには血糖値を調整する働きがあります。
そのために、甲状腺疾患を発症すると血糖値が不安定になります。血糖値が不安定なまま放置すると、太りやすくなり、Ⅱ型糖尿病のリスクを高めます。
不適切な食事は甲状腺疾患の方の血糖値をさらに不安定にさせてしまいます。これはバセドウ病の方、橋本病の方、潜在性甲状腺機能低下症の方にもいえることです。
甲状腺疾患の方は治療によって甲状腺ホルモンを安定させると同時に、血糖値を安定させるような食事が大切です。治療が不要な経過観察中の方も同様に、食生活に注意をしましょう。
砂糖や果糖の多い菓子類や飲み物、炭酸飲料などは血糖値を不安定にさせる大きな原因となりますのでできるだけ控えるようにしましょう。
甲状腺ホルモンにはコレステロールの調整作用があります。そのために甲状腺疾患を発症するとコレステロールのバランスが乱れやすくなってしまいます。
橋本病の方はLDLコレステロールが高くなる傾向にあります。
バセドウ病の方はLDLコレステロールが低くなりやすく、内服治療を始めるとコレステロールが急速に高くなることがあります。
潜在性甲状腺機能低下症の方もLDLコレステロールが高くなりやすい傾向にあります。
LDLコレステロールが高くなれば動脈硬化のリスクも高くなってしまいます。
ただ、コレステロールは女性ホルモンや抗ストレスホルモン等の材料になる大切なものですので、極端に減らしてしまえば、ストレスに弱くなり、またインフルエンザや風邪をはじめとする感染症にもかかりやすくなってしまいます。
そのために、食事療法で体に無理をかけることなく調整することが大切です。まずは、LDLコレステロールを増やす動物性脂肪の過剰摂取を避けましょう。
甲状腺疾患による体重増加の一部はむくみによるものです。むくみは甲状腺機能の低下によって起こります。
むくみに加え、脂質代謝異常によって増えた脂肪が肥満の原因となります。
治療によって甲状腺ホルモンやTSHの値が安定することで、むくみは解消されやすくなります。
また、甲状腺ホルモンの値が正常化することで脂質代謝も改善されやすくなります。
これらに伴い、体重の増加はストップし、緩やかに減少していくとされています。
甲状腺ホルモン値が正常化した際に体重を適切に管理できるようにバランスの良い食事と適度な運動を心がけましょう。