甲状腺疾患と合併症


甲状腺ホルモンは糖や脂質の代謝を調整しているため、バセドウ病・甲状腺機能亢進症及び、橋本病・甲状腺機能低下症のいずれにおいても、代謝異常に伴う様々な合併症のリスクが高まります。

 

どのようなリスクが高まるのかを知った上で、これらを予防するために食生活を見直してみましょう。


甲状腺ホルモンと血糖値


橋本病や潜在性甲状腺機能低下症と血糖値の関係は?
橋本病や潜在性甲状腺機能低下症と血糖値の関係は?

甲状腺ホルモンには血糖値を調整する働きがあります。甲状腺ホルモンが乱れると血糖値が不安定になりやすくなります。

 

不適切な食事は血糖値の乱れをひどくします。そのために、甲状腺疾患の方は治療をしっかり受けることと、血糖値を整える食事が大切です。

 

潜在性甲状腺機能低下症の方は血糖値が不安定な状態が続くと橋本病に進行するリスクが高まってしまいます。

 

バセドウ病や橋本病の方は血糖値を正しくコントロールすることで治療をスムーズにサポートすることができます。血糖値を整えると体重をコントロールしやすくなりますので、体重の過剰な増加を防ぐことができます。


糖質は不足もとりすぎも危険


橋本病や潜在性甲状腺機能低下症に適切な糖質摂取は?
橋本病や潜在性甲状腺機能低下症に適切な糖質摂取は?

糖質は脳や赤血球にとって、とても大切な栄養素です。また、基礎代謝を上げる役割を果たしています。

 

厳しい糖質制限をすると、はじめのうちは体は燃焼モードになります。ところが、そのうちに必要な糖質が不足していることにストレスを感じてしまい、体は危機感を覚えます。その際、いざという時のために貯金を始めます。これは「脂肪貯金」です。

 

 

その反対に糖質をとりすぎた時はどうなるでしょうか?必要以上の糖質を摂取した時、糖質は余ってしまいます。その際も「脂肪貯金」を始めます。

 

糖質は不足してもとりすぎても、「脂肪貯金」は増えていきます。脂肪が増えれば血糖値にも悪影響を与え、メタボリックシンドロームのリスクを高めてしまいます。

 

糖質は制限し過ぎるのではなく、適度に摂取することで全身に栄養を届ける役割を担ってくれます。すると、代謝がスムーズに進むため、糖質を摂らない時よりも脂肪は蓄積されにくくなるでしょう。


糖質はビタミンとセットでとりましょう


©Apointy 甲状腺疾患のための糖質の摂取法 写真はイメージ
©Apointy 甲状腺疾患のための糖質の摂取法 写真はイメージ

白米や精白小麦の白いパンを好んで食べていませんか?

 

白米や白いパンには糖質の代謝に必要なビタミンB1があまり含まれていません。そのために、これらの糖質ばかりを摂取していると、体内に中性脂肪として蓄えられてしまいます。

 

糖質はできるだけ玄米や雑穀米、全粒粉のパン等の精製度の低いものを選びましょう。また、糖質ばかりを多く食べずに、野菜やタンパク質のおかずもバランス良く食べましょう。これらの食品に含まれるビタミン類は代謝をスムーズに進める作用があります。


甲状腺ホルモンとコレステロール


甲状腺ホルモンにはコレステロールの調整作用があります。そのために甲状腺疾患にかかるとコレステロールのバランスが乱れやすくなってしまいます。

 

バセドウ病の方はLDLコレステロールが低くなりやすく、内服治療を始めるとコレステロールが急速に高くなることがあります。

 

橋本病の方はLDLコレステロールが高くなりやすいのが特徴です。

 

潜在性甲状腺機能低下症の方もLDLコレステロールが高くなりやすい傾向にあります。

 

LDLコレステロールが高くなれば動脈硬化のリスクも高くなってしまいます。ただし、コレステロールは女性ホルモンや抗ストレスホルモン等の材料になる大切なものですので、極端に減らしてしまえばかえって他の病気にかかりやすくなってしまいます。そのために食事療法で体に無理をかけることなく調整することが大切です。


甲状腺ホルモンと肥満


橋本病、バセドウ病、潜在性甲状腺機能低下症と肥満の関係
橋本病、バセドウ病、潜在性甲状腺機能低下症と肥満の関係

甲状腺ホルモンには脂肪代謝の調整機能があります。そのために、甲状腺ホルモンやTSH(甲状腺刺激ホルモン)のバランスが崩れると、体重のコントロールが難しくなってしまいます。

 

バセドウ病の方は内服治療が進むと基礎代謝量が変化し、また、脂肪代謝も変化しやすくなるために太りやすくなってしまいます。

 

橋本病の方は脂肪代謝が上手くいかず、基礎代謝量も低下しているために太りやすく、痩せにくくなってしまいます。

 

潜在性甲状腺機能低下症の方も橋本病と同様に太りやすく痩せにくくなる傾向にあります。

 

いずれの方も無理なダイエットは大きなリバウンドとして跳ね返って来てしまいますので、注意が必要です。

 

 


むくみや基礎代謝の変化と食事療法


橋本病、バセドウ病、潜在性甲状腺機能低下症と肥満の関係
橋本病、バセドウ病、潜在性甲状腺機能低下症と肥満の関係

 

甲状腺疾患による体重増加の一部は水分によるむくみです。甲状腺ホルモンやTSHが安定すればむくみの解消やコレステロール及び中性脂肪値の改善によって体重の増加はストップし、緩やかに減少すると言われています。

 

ただ、実際には甲状腺疾患発症前の正常値には戻らないケースが多々あります。これには、主に2つの理由が挙げられています。

 

1つめは、「内服薬で調整した体内の甲状腺ホルモン量と体内で起こる実際の代謝の変化のバランスをとることが難しいために太ってしまうこと」、2つめは「食欲中枢そのものの変化」です。

 

その他にも、筋力の低下といった体内組織の変化によって、基礎代謝が元通りにならないことも考えられます。

 

甲状腺ホルモン値、代謝、食欲の誤差を縮め、体重を安定させていくためには、食事療法が何よりも大切です。