甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症のいずれにおいても、月経異常を起こすことが知られています。
甲状腺ホルモンの司令塔は女性ホルモンと同様に脳の下垂体という所にあるために、互いに影響を与え合ってしまうことがあります。
甲状腺疾患の治療中の方の中には月経が起こる1,2週間前から頭痛や腹痛、イライラ、不眠などのさまざまな不快症状が出やすいという方が多くいらっしゃいます。
一般的にはPMS(月経前症候群)と呼ばれるものですが、PMSの症状に加え、うつ症状や不安症状を訴える方もいらっしゃいます。
この様な気分障害を伴うPMSを「PMDD(月経前不快気分障害)※」と言います。PMDDの症状は日常生活が困難に成るほどの大きな気分障害を伴うことがあります。
※PMDDはpremenstrual dysphoric disorderの略です。
PMDDやPMSの症状を来たしていても、女性ホルモンの値が異常を来たさないことも多く、本人が症状を訴えない限り、診断がつきにくいでしょう。
PMDDやPMS明確な原因は今のところ分かっていませんが、脳内の神経伝達物質が関与しているのではないかと言われています。
女性ホルモンのプロゲステロンは脳内の神経伝達物質であるセロトニンに影響を与えると言われています。
セロトニンの不足は気分障害と密接に関わりのある神経伝達物質ですので、プロゲステロンの変動がセロトニンを減少させ、気分障害を引き起こしている可能性があるのではないかと言われています。
甲状腺疾患とPMDDの関係も、今のところは明確ではありません。しかし、甲状腺ホルモンの司令塔は女性ホルモンの司令塔と同じ脳の下垂体に位置します。甲状腺疾患を発症すると月経異常を来たしやすいことから、PMDDの発症にも関係があるのでしょう。
また、女性ホルモンは環境やストレスの影響も受けやすいために、環境の変化やストレスもPMDDの原因となる恐れがあります。
PMDDやPMSは明確な原因が分かっていないために、具体的な症状の緩和法は今のところはありません。
多くの方は様々な代替療法等によって、症状の緩和を試みています。主な軽減法は次の様なものです。
いずれも症状の緩和を保証するものではありませんが、お風呂にゆったりと浸かったり、リフレッシュになる様なウォーキングを楽しんだり、刺激物を避けることで、身体がリラックスし、症状の緩和につながるものもあるでしょう。
甲状腺疾患の治療中の方は、甲状腺ホルモンを安定させることがPMDDの症状の緩和につながることも考えられます。まずは治療をしっかりと受け、そして、甲状腺の負担になる様な食生活を避けることが大切です。
前述の様な代替療法が気分障害の緩和につながることもあります。
気分障害が強い場合は、症状そのものが身体に強いストレスを与え、悪循環を生んでしまいます。
心からリラックスるためには、パートナーやご家族の理解も必要です。辛い症状は一人で抱え込まず、できるだけ伝えるようにしましょう。無理をせず、時には医師に相談することも大切です。
PMDDやPMSの緩和にはホルモン療法や心理的な側面へのアプローチ等が考えられます。辛い症状を抱えている場合は、一度、婦人科の医師に相談してみると良いでしょう。
食事から摂取する栄養素はホルモンバランスを整える大きな味方です。
女性ホルモンのバランスには食生活も大きな影響を与えています。
また、PMDDやPMSの症状を呈している際には、サプリメントを服用するケースもあるように、ビタミンやミネラルの不足はこれらの症状に影響を与える可能性があります。
日々の食事はビタミンやミネラルの摂取源として大切なものです。多くのビタミンやミネラルはサプリメントに含まれるものよりも食品中に含まれるものの方が吸収効率が良いことも分かっています。
特にミネラルは気分障害と密接な関係があることも分かっています。ミネラルの中でも「亜鉛」の不足はうつの様な気分障害を起こす原因の1つです。
また、塩分の過剰摂取も気分障害の原因の1つであるために、減塩食は気分の落ち込みの緩和につながることがあります。
不調を感じていると、食欲がなくなってしまう方も多いでしょう。ところが食事を摂らなければ、ビタミンやミネラルはますます不足し、そのことによってPMDDも悪化してしまう恐れがあります。
気分障害に対して食事が効果を発揮するまでには時間を要します。食生活を見直し、あせらずじっくりと辛い症状が少しずつ緩和されていくことを願っています。まずはリラックスを心がけ、ゆったりとした気持ちで栄養バランスの良い美味しい食事を楽しみましょう。
そして、必要に応じて医師に相談しながら適切な治療を受けましょう。