橋本病の方で甲状腺機能低下症を発症されている方はTSH(甲状腺刺激ホルモン)が上昇し、甲状腺ホルモン値が低下しています。
また、橋本病だが経過観察中の方は「潜在性甲状腺機能低下症(橋本病の疑い、橋本病の経過観察中)」と呼ばれ、TSH(甲状腺刺激ホルモン)が上昇し、甲状腺ホルモン値が低下しやすいというリスクを抱えています。
TSHや甲状腺ホルモンは女性ホルモンと同様に、妊娠の成立に関係するホルモンであるため、「妊娠を希望している方」、「妊娠中の方」は橋本病や潜在性甲状腺機能低下症の治療をすることで、妊娠を成立させやすくなり、妊娠生活をより安全に送ることができるようになることが分かってきてきます。
また、甲状腺ホルモン値の異常は胎児の健全な成長に悪影響を与える恐れがあります。妊娠中は甲状腺ホルモンが乱れやすくなっています。そのために、橋本病や潜在性甲状腺機能低下症の方で妊娠を希望される方、妊娠中の方は、TSHや甲状腺ホルモンの値に十分な注意が必要です。
参考文献:
Environmental Health Perspectives • VOLUME 110 | SUPPLEMENT 3 | JUNE 2002「A Model of the Development of the Brain as a Construct of the Thyroid System」
バセドウ病、橋本病、潜在性甲状腺機能低下症の方は妊娠中の甲状腺ホルモンのバランスに、特に注意が必要です。まず第一に、甲状腺ホルモンのバランスを保つ治療を受けることが大切です。
その上で、甲状腺を刺激する栄養素を避ける必要があります。
「ヨウ素」は甲状腺ホルモンの材料となる大切な栄養素の一つです。妊娠中は胎児の成長のためにもヨウ素は妊娠前より多く必要です。ただし、ここで注意点があります。多めといってもヨウ素の必要量はごく微量です。
ヨウ素をとりすぎると甲状腺ホルモンのバランスを崩してしまいます。
ヨウ素は海藻類、特に昆布に多く含まれています。日頃から和食を食べる習慣のある日本人にとっては多くの場合、不足よりも「ヨウ素過剰摂取」の心配があります。
ヨウ素の過剰摂取を続けると、一次的に甲状腺機能が亢進したり、潜在性甲状腺機能低下症が橋本病に進行する恐れもあります。
日頃からヨウ素の過剰摂取に気を付けましょう。
参考文献:
- National Institutes of health 「Health information Iodine」
- 文部科学省「日本食品成分表2015年版(七訂)」
(いずれも2019年5月23日参照)
甲状腺ホルモンは妊娠や胎児の成長に重要な役割を果たしています。そのために、甲状腺ホルモンのバランスが崩れていると、流産のリスクや胎児が順調に成長しないリスクが高くなってしまいます。妊娠中のマタニティーブルーも甲状腺ホルモンが関係しています。
甲状腺ホルモンや甲状腺ホルモンの司令塔であるTSH(甲状腺刺激ホルモン)は、妊娠の維持や「胎児の成長」に関わる大切なホルモンです。
妊娠中にこれらのホルモンバランスが崩れると、母体や胎児の成長にも大きなストレスを与えてしまう恐れがあります。妊娠中の高血圧、糖尿病、流産、早産等のリスクが高まる恐れがあります。
甲状腺ホルモンの乱れはマタニティーブルーを引き起こす恐れもあります。
潜在性甲状腺機能低下症であっても、妊娠中は甲状腺ホルモンのバランスが崩れやすいために注意が必要です。
バセドウ病や橋本病の方も、妊娠を希望する方や妊娠中は通常よりも細やかな甲状腺ホルモンのコントロールが必要です。
参考文献:
Environmental Health Perspectives • VOLUME 110 | SUPPLEMENT 3 | JUNE 2002「A Model of the Development of the Brain as a Construct of the Thyroid System」